ユーロ危機(欧州ソブリン危機)は2010年に、ギリシアの前年度の財政収支に粉飾があったことが明るみにでたことに始まりました。
ユーロはEU各国が相互の貿易や交流促進、また、米ドルに対抗しうる基軸通貨となりうるために誕生した通貨です。
経済的に、EU圏を一つの大きな経済圏とすべきとして始まった通貨統合ですが、それぞれの国の抱えている状況はもちろん、それぞれです。
ユーロ圏が広がっていく中で、比較的、経済がしっかりしており、財政状況もよい、ドイツや、フランスが、PIIGSを代表とする財政赤字の大きい国々への支援を行うという構図が当初より懸念されていました。
そのため、ユーロ導入国では各国の財政赤字の基準を設け、その基準内に収めるように求められています。
ギリシアも当然、ユーロ導入国の一つとして、この財政赤字について基準内に収まるように求められている国です。ユーロ加盟時に求められたのが、GDPに対する財政赤字幅は3%とされました。
ギリシアの表向き財政赤字はGDP比3.7%としていました。しかし2009年10月に政権交代が起り、そこで、実は、ギリシアの財政赤字はGDP比12.5%だと発表されました。
これにより、ギリシア国債のムーディーズなどによる格付けは大きく引き下げられ、2010年6月には「A3」から「Ba1」まで4段階引き下げれました。
こういった一連の流れの中で、当然、ギリシアの国債は大暴落。ギリシアも新規国債の発行も難しくなり、デフォルトが発生するのではないかといわれるようになりました。
これがユーロ危機(欧州ソブリン危機)の発端となっています。
しかし、これはギリシアだけの問題で終わっていません。
さきほども書きましたPIIGS、ポルトガル、イタリア、アイルランド、ギリシア、スペインはもともと財政状況が悪く、この2010年には、これらの国々の国債価格も下落していきました。
ユーロ危機はギリシアに始まり、これら、南欧各国の財政問題を改めてクローズアップされ各国国債の下落、それに連動し、ユーロも下落ということが発生したのです。
その後、ギリシアはECB(欧州中央銀行)からの融資を受け、当面の危機は乗り越えたと言われています。
とはいえ、ギリシアに限らず、PIIGS各国の国債がなくなったわけでも、財政赤字が大幅に縮小したわけでもありません。
ドイツ、フランスからの支援で時間稼ぎをしているというのが、現実であるといえます。
このように欧州危機はすべてが解決しているわけではなく、潜在的にはまだまだ大きな問題を抱えたままとなっています。
このような状況を踏まえ、FXではユーロとの付き合い方を考えていかなければいけません。
もちろん、為替相場は、一国もしくは一つの経済圏だけの事情で決まるものではありません。しかし、長期的にはやはりファンダメンタルズの良い通貨は高くなり、悪い通貨は安くなるという傾向は否定できません。
つまり、ユーロもギリシアをはじめとするPIIGS各国、またユーロ導入が義務付けられている東欧各国の財政事情が大きく改善されない限り、ユーロ危機はいつ再燃してもおかしくありません。
最近でもキプロス危機が発生しています。
このように、この先数年(もしかしたら10年以上)、ユーロ圏内では絶えず、それぞれの国の財政危機が報じられ、そのたびにユーロ安という展開は避けられないと考えられます。
もちろん、短期的にユーロ高はあると思います。しかし、何かのきっかけですぐにユーロ安となる展開が続く可能性が高いです。
つまり、ユーロを買ったまま長期保有というのは非常にリスクの高い状態だと言えます。
この先のユーロとの付き合い方は、絶えず、大きなユーロ安のリスクを抱えていることを考慮しながら、どこかの危機のニュースが流れたら売り、その後、持ち直していく展開で買い、そして、買いの時はあまり欲張らず、早めに決済といったこまめな売買、状況判断を求められます。